アイリスガーデンへの招待状
ゴールデンイエローに輝く濃密な液体を光にかざして見つめる。
瓶の中でゆらりゆらりとゆれている。
ゆっくりと嗅覚を研ぎ澄ませるようにして香りに集中する。
最初に香りを嗅いだ瞬間、たちまち脳が冷たく「キュンッ」と上り詰める。
始めは一体何が起きたのかわからない。
どんな世界に連れて行かれてしまったのかと一瞬戸惑う。
静寂と緊張感。有か無か。思考が一時シャットダウンされる。
頭の中のキャンバスが真っ白になる。
やがて、水が流れるように、じわじわと香りが身体と心を満たし始める。
その香りにいざなわれるようにして想像の世界が広がっていく。
硬直していた心が柔らかく開き始める。
こんがらがっていた心の中の紐がするするとほどかれていく。
頭のどこかでこんな声が聞こえる。
「アイリスガーデンへようこそ、どうぞリラックスしていってください。」
案内された場所へ足を運ぶと、ニオイアヤメが一面に咲き立つ庭園が
目の前に広がった。紫色をした生命力に満ち溢れた花々。
美しすぎて目がくらむ。
しばし耽った非日常の陶酔の後、現実に感じるぬくもり。
胸の中にはラストノートと共にぽかぽかとした幸福感が残っている。
それはそれは甘くやさしいぬくもり。
花々の恵みを確かに受け止めたという一体感。
自己と植物。お互いの生命が融合した。
想像を超えて、はるかにここはいい場所だ。
感想:サカモト
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